毎日家に帰るときだけ前に町が見下ろせる下り坂を通る
電線がゆるやかに下る。接続という言葉を思い出す。
おだやかな波のような、やわらかなカーブ。

大体三十歩くらいで渡り終えてしまうのだけれど。
そうその公園を抜けて、坂を下りると、あとはゆったりした家がいくつもいくつもいくつも
思い思いに、花火会場に広がる青いビニールシートみたいに、
すきまを見つけて並んでいる。どれもこれも同じようにみえる。

帰っていく。
物語の終わり。

そこを通るのはいつも少しだけ驚きを呼ぶ。

しずかに接続する。
ひいていく波。

「キスしようか、電車を降りたら」

予感がある。もうすぐ視野が開ける。
そこで私たちは、来た道を振り返って
いくばくかのかぼそい道筋をなつかしく思い出す。
いっしょにいたあとの朝のように少しだけ疲れて
まぶしい目をする。
いくつかの新しいつながりを見つける、たとえば
夜のあとには朝が続くということ。
それは死ぬまで続くということ。
ここからきてここに帰っていくということ。