[ふと、校舎から合唱が聞こえてくる。木漏れ日みたいに。とりあえず近寄る。
それはなんというか体験したことのない時間の、思い出みたいなんだ。
「こうした時間があったことを、いつか思い出す日がくる」という物語の、「こうした時間」がそこにあるという感じがする。

思い出の無い人間が、思い出を分けてもらえるような気がする。
だから、とりあえず近寄る。……その価値さえないのに。]