2009-08-10 ■ たなごころの中に街があり、街の窓はすべて、 海のほうに向かってひらかれている。 シルクを広げたやうな海は より、もどして。より、もどして。 なゆたの鈴を、とおくで ちりぢり鳴らしているかのようなせみも。はんぶんぐらいしか、心がなくて。町々をつなぐ、 でんしゃのなかは、暗い。 城ヶ崎海岸。伊豆稲取。白い煙のような空が針葉樹林の複雑な輪郭線を、神妙に刻んでいます。 向かい合った私たちは無言で。 心にはなにかを思っている。 泳ぎつかれた眠い体をひきずって……。