たなごころの中に街があり、

街の窓はすべて、
海のほうに向かってひらかれている。


シルクを広げたやうな海は
より、もどして。

より、もどして。


なゆたの鈴を、とおくで
ちりぢり鳴らしているかのようなせみも。

はんぶんぐらいしか、心がなくて。

町々をつなぐ、
でんしゃのなかは、暗い。




城ヶ崎海岸

伊豆稲取

白い煙のような空が

針葉樹林の複雑な輪郭線を、

神妙に刻んでいます。


向かい合った私たちは無言で。


心にはなにかを思っている。


泳ぎつかれた眠い体を

ひきずって……。