だんだん本の紹介になっていく……

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野村誠『路上日記』(ぺよとる工房/CDつき)を読んだ。
思春期の都市で暮らしてみたい――からはじまる、けんばんハーモニカの路上演奏をする作曲家の日記だ。最初は誰も立ち止まってくれないものの、サザエさんのテーマを演奏してみると、ぐっと人がのってくる。
いろいろ聞かれることもあるようで「そのお金どうするの」とか聞かれて「これで生活しているんです」と答えている。かっこいい!
こんなふうにコミュニケーションができるんだなぁ、してもよいのだなぁ。天衣無縫のこころがたまらなく良くその存在を思うだけで地球がすこしだけ暖かい場所になるよ。

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日記つながりで武田百合子富士日記』(中公文庫)これは寝る前にパラパラと読んでいる。

帰省するときのあの霧に向かうような白っぽい空気、しばらく訪れなかった家のしんと冷えたよそよそしさ、よそものになる感じ、よそものがよそものに会う感じ、エトセトラが折り込まれていてページから匂い立ってくるのでうむっとしてしまう。

百合子さんが朝はやく起こされてむっとして運転していて、夫のひとがずいぶんなぐさめてもむっとしていて、なにか、トンネルのなかに落として、車を止めて夫のひとはトンネルの真ん中にずんずんずんずん入っていく、そんなの入らないから、危ない、という声に耳をかさずそれを拾ってくる、トラックの運転手が危ないじゃないかと怒鳴る、百合子さんは足にすがって声もでないほど泣いている、というところがいきなり切り取られてそこだけ心にひっかかっている。

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そして心のそこから、ぁぁぁあ、他人の日記を読むのがわたしは好きだなぁ……というおもいがじんわり浮かんできます。
わたしは鬼のように他人の日記をすみからすみまで読みます。WEBはものすごい宝庫で、ほっとくと一日中、寝ないで読んでしまうので怖い。気になる文章があると執拗に追っかけて読んでしまう。「こんなの時間のむだだ」「ああああ、明日までに書類作らないと」と思ってもやめることができない。筋肉痛になる、まじで。肩がピッキーンとなる。

そんなわけで自宅作業とかできないね。仕事やめて一日中本とWEBを読んで暮らしたら、それは不幸かもしれないけど幸せだ。

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ひとの日記を読んでいると、いちいち自分にひきつけて「あぁそうだよね」とか「そこはそう思ったこと無いなあ」とかひとりで思っている。

百合子さんがごはんを食べていてなぜか途中で嫌になってしまうところ「そういうことあるよね」と思った。
すごく食べられるとおもったものでも、なぜか途中で うえっぷとなることはあるようね……。

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