あけましておめでとうございます。

グレッグ・イーガンの新刊『tap』を読みました。

表題にもなってる短編「tap」はすべてをあらわすことができるオルタナティヴな言語をあやつる新人類の登場をえがいた佳作で、それをつかえばことばであらわしようのない「この瞬間」をあやまたずすくいとり他者に伝達できるという。(外側から意味を伝達できるだけではなく「内側から感じる」モードもある)

際限なく繊細なことば。リアリティの深度。
でも完璧な言語なんてよくわからない。
どこかで線をひいて、分節する以上、言い落とすことはあるし、どこで分節するのかどうやって決めるのかな。言葉のないところに言葉を作るその衝動はどうやって生まれるのかな。

いくつかの短編の中で、なんといっても「ユージーン」が収穫でした。こういうのだいすき! せつない非在の存在モノです。そんなジャンルはないけど。

はじめて知りましたが、イーガンは初期にはホラー作家だったようで、まあどちらかといえば凡庸なホラーもいくつか入っておりました。

ジョン・クロウリーの『エンジン・サマー』が復刊されていて、読めてうれしいです。
エンジン・サマーというのは、インディアン・サマー(小春日和)ということで、文明崩壊後、人類の終末へむかう世界の、落日の、つかの間のたそがれ、小春日和というのは、なんつーか一種のユートピアのようでとてもほっとする。

終盤に唸るシーンがあって、これはもっともっと前に読んでおきたかったなと思う。
今読んでもなぜかそれほど驚けなくて、身に迫ってこなくて、なんかもったいなかった。